全部、直ってきました。それで、困りました。 − "二色の赤" −
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部下の資料に入れた赤(直してほしいところの書き込み)が、そのとおり全部直って返ってきました。例として書いた言い回しまで、そのまま入っていました。
望んだとおりのはずなのに、困りました。直さないと困る赤と、直さなくても伝わる赤を、僕は同じ強さで渡していたからです。
この記事は、その赤を二つに分けるまでの話です。
全部、直って返ってきた
📄 この章の話
赤を入れた資料が、全部そのとおりに直って返ってきた日の話です。
部下が作った資料を確認して、直してほしいところに赤を入れて返す。そういう場面は、今もあります。
急いでいるときは修正案まで書きますが、基本は本人に考えてもらう返し方です。
開いて、少し驚きました
ある日、返した資料が戻ってきました。開いて、少し驚きました。
赤を入れたところが、全部そのとおりに直っていました。
例として書いた言い回しが、そのまま資料に入っていました。
例のつもりで添えた言葉です。本人の言葉ではないので、その箇所だけ、周りの文章と少しチグハグに見えました。
「こうした方が分かりやすい」くらいのつもりで入れた直しも、そのまま反映されていて、資料全体のバランスが崩れているところもありました。
ナギ
読み返して、引っかかりました。そこまで直してほしかったわけではなかった。
でも、赤を入れたのは僕です。こちらにとっては案でも、受け取る側には指示に見えていた。
そう気づくまでに、少し時間がかかりました。
自分の赤を、振り返ってみた
振り返ってみると、僕が入れていた赤には、中身の違うものが混ざっていました。
数字が違う。結論と根拠がつながっていない。説明に必要な情報が抜けている。
これは、直してもらわないと資料として成立しない赤です。
直さなくても、内容は伝わる赤
一方で、結論をもう少し前に置く。説明をもう一段細かくする。この言い回しの方が伝わる。
これは、直さなくても内容は伝わる赤です。より良くするための赤で、僕の好みに近いものもあります。
ポイント:僕の赤には、中身の違うものが混ざっていた
- 直してもらわないと、資料として成立しない赤
- 直さなくても、内容は伝わる赤
僕の中では、前者をMust、後者をWantと分けています。頭の中では、分かれていました。
でも、資料の上ではどちらも同じ赤でした。同じ色、同じ調子で書き込んでいました。
僕の赤は、一色でした。中身は、二色だったのに。
若い頃の僕は、上司の赤を全部直していました
少なくとも若い頃の僕は、上司から修正をもらえば、基本的に全部直していました。「これは直さなくてもいい」と自分で選ぶ発想は、あまりありませんでした。
勝手に残す勇気は、僕にはなかった。残して、出来ない奴だと思われる方が怖かった。
そう考えると、僕の赤が全部直って返ってきても、不思議ではありませんでした。僕は、自分がそうだったことを忘れて、同じ強さの赤を渡していました。
指示を出す前の話は、前に書きました。今回は、戻ってきた資料に僕が入れる赤の話です。
赤には、直してもらう以外の用事もある
ここまで書いてきた「二色」は、修正案についての話です。赤には、それとは別に、質問やアドバイスとして書くものもあります。
資料から僕が読み取れなかったことは、質問の形で書きます。その場合は、個別に説明してもらいます。
今後のためのアドバイスを書くこともあります。これは、会話を始めるための書き込みです。
ポイント:直してもらうため以外の赤
- 読み取れなかったことは、質問の形で書く
- 今後のためのアドバイスは、会話を始めるための書き込み
ただ、修正案まで具体的に書いた赤は、そのまま直って返ってくることがほとんどです。だから今は、修正なのか、質問なのか、こちらの意図が分かるように返しています。
いまは、赤の強さが伝わる書き方にしています
修正の赤を返すとき、いまは二つの強さを分けて書いています。
必ず直してほしい赤は、言い切ります。曖昧にしません。
よりよくするための赤には、「Want」と書き添える
よりよくするための赤は、赤の横に「Want」とだけ書き添えます。今回は必ず直さなくてよい、次の資料から意識してほしい、という意味です。
何も書いていない赤は、必ず直してほしい赤です。印をつけるのは、Want側だけです。
赤の数を、減らしたわけではありません
分けたからといって、赤の数を減らしたわけではありません。Wantにも、伝える値打ちはあります。
経験から、より伝わる形を提案できることはある。足りなかったのは、Mustと見分けのつく書き方でした。
変えていないのは、直す基準です
もう一つ、変えていないことがあります。直す基準です。
毎回基準が変わると、「気分で言うことが変わる上司」に見える。僕自身、前回と今回で基準が変われば、相手は戸惑うと思っています。
基準はそのまま、書き方だけを変えました。
ナギ
どこまで答えを示すかは、相手の経験に合わせて変えています。まだ自分だけでは考えきれない人には、修正案まで書きます。
急いでいるときも、修正案まで示します。相手と時間に合わせて、何をどこまで返すかを調整する。
それも、赤の仕事のうちだと思っています。
🖍 修正として返す赤は、二つに分けています
- 必ず直してほしい赤(Must)は、言い切る
- よりよくするための赤(Want)は、横に「Want」と書き添える
まとめ|赤の数より、赤の強さ
減らすべきだったのは、赤の数ではありませんでした。分けずに渡していた、赤の強さでした。
若い頃の僕なら、どの赤も同じように「直すもの」と受け取っていました。だから、赤を減らすより先に、その意味が分かるようにしました。
基準は変えず、修正の赤だけは、強さが分かるようにしました。
※この記事は、一人の管理職の一次体験です。資料の種類・時期・相手は、個人や会社が分からない形に整えています。「Must」「Want」は僕の分け方で、会社の制度ではありません。
— Calmly. Surely. —
校正という仕事には、返す線がある
僕の赤は、資料を直すための赤でした。校正という仕事を通して、「正す」と「整える」を別々の章で扱っている本があります。今回の赤を考えていて、この二つの章タイトルが目に留まりました。
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校正のこころ 増補改訂第二版 積極的受け身のすすめ
現役の校正者が、校正という仕事の技法や姿勢について書いた一冊です。目次には「言葉を『正す』という校正」と「言葉を『整える』という校正」が、別の章として並んでいます。
- 「正す」と「整える」を、別々の章で扱っている
- 副題は「積極的受け身のすすめ」。直す側の構えを考えられる
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